自分らしいキャリア&ライフを確立したい。が、どうすればできるのか――?
これから社会へ出た後、20代~30代でぶつかるであろうキャリア選択の課題について戦略コンサルティングファーム・BCGのコンサルタントを中心に、第一線で活躍中のプロフェッショナルたちにその解決策や思考法を聞く。より良い人生を送るために、仕事とどう向き合い、キャリアを切り開いていくべきか、本質思考で考えてみよう。
第2回は、若手コンサルタントが学生たちの質問に答えていく形で、就職活動のあり方や、20代の時期に挑むべき「成長」について、自由に語り合ってもらった。
――まずは、コンサルタントのお2人の就職活動時のお話を聞かせてください。どんな経緯でボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)への入社を決めたのですか?
千田秀典氏(以下、千田):
私は大学、大学院と、一貫して航空宇宙工学を学んでいました。ずっと航空機開発エンジニアになることを目指していたのですが、就活を始めようかという時期、航空業界をはじめ日本の製造業が厳しい状況に陥っていました。
そのような中で、いちエンジニアとして技術の部分で付加価値を出すことだけではなく、もっと別の立場から業界全体の復興に寄与することはできないかと考え始めたんです。
そうしてたどり着いたのが2つの選択肢です。一つは経済産業省などの一員になって、行政の立場から産業界に貢献していく道。もう一つはコンサルタントとして、戦略策定やその実行支援によって企業に貢献していく道。
迷った末に、最終的に選んだのがコンサルタントの道でした。
サカイ シュンスケさん(以下、サカイ):
私は千田さんと同じく大学院生で理系専攻です。どうしても研究などに時間を取られがちで、就活を進める時にどうタイムマネジメントしていこうかと考えてしまいます。千田さんはどうしていたんですか?
千田:
私も就活中のタイムマネジメントの難しさは感じました。その点からも、夏のインターンシップ前には、2つの選択肢に絞り込むことにしたんです。インターンは官公庁とコンサル業界のみ参加することにして、選考を受ける会社も数社に限定しました。
細かいスケジュール管理やプランニングはあまりしていませんでしたが、早い時期に集中して自分の進むべき道をゆっくり考えて吟味する時間を取っておいたことで、その後の就活は効率的に進められました。
数打ちゃ当たる方式の就活をやらなかったから、研究と両立することができたんだと思っています。
シラカワ アユキさん(以下、シラカワ):
僕はパブリックセクターへ進むべきか、コンサルタントを目指すべきかで今迷っています。
何となく、官公庁が指示を出したり決済権を持ったりする上の立場で、コンサルや一般企業がそれに従って現場で動く下の立場、みたいなイメージでいるんですが……。
千田:
どちらかが上で、どちらかが下ということではなく、そこは役割の違いかなと思います。
サッカーに例えるなら、プレーヤーが動きやすいようにコートの外でルールを決めるのがパブリックセクターで、コートの中のプレーヤーをどのようにサポートするかを考えているのがコンサルタント。関わり方は違うけれど、共により良い試合を行うために貢献しています。上下の序列というよりは、それぞれ違う役割を担いつつ、共に産業や企業の発展をサポートしているんです。
シラカワ:
なるほど。では、千田さんはそこでなぜコンサルタントの方を選んだんですか?
千田:
「法律や制度に軸足を置くのではなく、ビジネスの側面からダイレクトに関わっていく方が面白い」と感じたことが最大の理由です。これはもう直感というか、自分自身の好みの問題ですね(笑)。
もう一つ挙げるとすれば「現場主義・成果主義」であること。つまり、現場で起きているファクトをベースにして企業に寄り添った戦略を練り上げ、その成果がすぐに目に見えて求められるコンサルティングのスタイルが、私には合っていると思えたんです。
また、BCGのように世界中のあらゆる業界のコンサルティングを手掛けるファームに入れば、個人的な思い入れがある航空業界に限らず、さまざまな産業や企業と向き合い、知見を得ながら、短期間で成長できると考えたんです。
日浦瞳子氏(以下、日浦):
私もBCGへ入社を決めた最大の理由は、ここでなら成長できると確信できたからです。
私は大学にいる間、ずっとアメリカンフットボール部のマネジャーをしていて、学生時代のほとんどの時間を部活に捧げていました(笑)。
ですので、毎日それはもう忙しく過ごしていたのですが、就職活動を始める時にはいったん立ち止まって、目の前のことだけでなく、「10年先、20年先の長いスパンで自分の将来を考えてみよう」と思ったんです。
文系の学生でしたから、専門性や突出した強みを持っているわけではありません。やりたいこともまだ分からない。だから「働き方」を軸に、自分がどうありたいかを考えていきました。
女性ですので、やはり出産・育児のことも視野に入れておきたい。ちょっと大げさかもしれませんが、就活をきっかけに人生設計をしてみたんですね。
10年後、20年後、自分はどう生きていたいか? まず、仕事は続けていたい。
とすると、ライフイベントがある前の20代前半は一番仕事に没頭できる重要な期間になる。それなら男女差なく成長チャンスが得られるフラットな環境で、思い切り力を付けたい。
そんなふうに考えて、就活当初は「女性社員がたくさん活躍していそうだから」という理由で、消費財メーカーや化粧品メーカーを中心に情報収集していました。
ですが、たまたま参加した合同企業説明会で初めてコンサルティング業界という存在を知り、その仕事内容や環境に魅力を感じて、複数社受けてみたんです。
――消費財や化粧品メーカーからコンサルティング業界へ志望業界が変わるとは、大きなシフトチェンジでしたね。
日浦:
実は、コンサルティング業界の仕事を知って、就職先選びに対する考え方がガラリと変わったんですよ。
それまで私は、10年後も20年後も活躍できる環境へ身を置くべき、と思って就職先選びをしていたのですが、そうじゃないと気付いたんです。10年後も20年後も活躍するためには、そもそもその時点で活躍できるだけのスキルや能力を自分が持っていないとダメなんだって。
それには、20代でいろんなことを吸収して成長し、やりたいことを見つけられる環境を就職先として選ぶ必要がある。それがかなうのが、まさにコンサルタントの仕事だなと思ったんです。
ただ、最初はコンサルティング業界やコンサルタントについてほとんど知識がなかったので、中長期で続けていける仕事なのかを確かめるために、複数の会社の方々に話を聞いてみました。同じコンサルティングファームの方でも、会って話を聞くと、各社それぞれカラーが全然違います。私には、BCGのカラーが一番フィットしているなと思い、入社を決めました。
ユアサ チヒロさん(以下、ユアサ):
外資系コンサルティングファームのカラーの違いってどういう差なんですか?
確かに、お2人を見ていると、私自身がファームに抱いていたイメージとは違う気がするんです。あの、「いい意味で」ですけど(笑)。でも、お2人はまたそれぞれ違うタイプの方ですよね。そうすると、BCGのカラーって一体何なのだろうと思いますし……。
千田:
いわゆる「外資系」とか「コンサルティングファーム」という言葉からイメージすると、ロジカルな口調で話すクールな人ばっかりがいそうに思いますよね? 私も同じようなイメージを就活していた頃に抱いていました。
もちろんそういうカラーのファームも存在します。ところがBCGはそうではないんですよ、「いい意味で」(笑)。
日浦:
そうですね。私も学生時代は、外資、コンサルというと、自分のキャラクターとは遠く離れたスマートで華やかなイメージを持っていました(笑)。でもBCGには、気取らない人が多くて、私のように「ガッツで頑張ります」みたいな人も普通にいます。
千田:
むしろ、そういう多様性がBCGの特質だし、定義しにくいところこそがBCGのカラーなのだととらえてくれたらうれしいです。
BCGは、人の個性や文化、発想の違いというものに対する許容度が高い。もちろん仕事に対する価値観や理想は共有していますが、似たようなタイプの人が集う集団ではなく、本当の意味で多様性が根付いているんです。
シラカワ:
商社もコンサルティングファームと同じく、経営に近い仕事の一つだと思うのですが、就活の時に商社は考えなかったのですか?
千田:
商社に就職した場合、恐らく特定の業界の中で長く経験を積んで行くことになるんだろうと思います。
それはそれで特定の領域で自分の力を高めたり、業界に貢献したりする上で意義のある形だと思いますが、私の場合は、そもそも航空業界や製造業に貢献したいというアスピレーション(願望)がベースにあったので、プロジェクト単位でさまざまな業界のサポートに携わることのできるコンサルを選びました。より自分のアスピレーションに近いプロジェクトに関わるチャンスに恵まれるだろうと。
それと私自身、大人しい気質なもので、商社のパワーに溢れたタフな文化よりも、コンサルの方が性に合うと感じたこともありました(笑)。
ユアサ:
お2人とも、就職先の選択肢ってたくさんあったと思うんです。その中で1社を選ぶための判断軸ってどうやって定めていったんでしょうか? きっとご自身の価値観に照らし合わせて整理していったと思うんですけど。
日浦:
私は学生時代に部活で辛かったこと、成功したこと、それぞれから何を得られたかを洗い出していきました。今までの人生の中で、自分が意思をもって決断したことの基準は何だったかも、改めて考えましたね。
千田:
死ぬ時に「この人生良かったなぁ」と思いたい。では、何ができていたらそう思えるのか?と自問自答しましたね。
結果、「自分ならではの社会貢献ができる」「人に感謝される」「自分が楽しいと思える」、この3つを満たす仕事をしていたいという答えに、私はたどり着きました。
好きなものは何か。問題意識を持つポイントはどこか。
自分の人生を豊かに過ごすためにどうするべきかを考える時間をしっかり持ってみたら、おのずと判断軸は整理されてくると思いますよ。
ウカイ ジュンヤさん(以下、ウカイ):
大学で学んだことの中で、自分の強みになったことってありますか? 就活時に役に立ったものとか。
日浦:
働き始めてから気付いたんですが、学生時代に何かにものすごく打ち込んでいた経験を持つ人が周囲にたくさんいるんですよね。
翻って考えると、つまりはそういう経験の持ち主が入社しているということ。勉強でも、活動でも、学生時代にこれに力を注いできましたと断言できる何かがあることは、就活でもきっと活きてくるんじゃないでしょうか。
――ご自身の就職活動を振り返って、これから就活を始める学生たちへ、今お2人が改めて伝えたいことは何でしょうか?
千田:
昔のような終身雇用の時代ではありませんから、新卒時の就職をそれほど重々しくとらえていない人もいるはずです。実際、転職したりして、幾度か大きな分岐点を経ていく人も多いでしょう。
けれども、だからといって就職を「ファーストステップでしかない」かのように軽くとらえてはほしくないのです。
せっかくこれからの人生を考える良い機会なのだから、「自分は何がしたいのか、何を面白いと感じるのか」、「何を大切にして生きていこうか」というように、自分を見つめながら進めてほしいと思います。
半面、「自分はこうなんだ」と決めつけてシャットアウトしてしまわずに、就活を通じて出会う人やチャンスから、自分の新しい可能性を広く見いだしていってほしいですね。
日浦:
私も同じく、「どの会社に入るか」と考える前に、「自分はどんな風に生きていきたいか」という人生のビジョンを描いてみてほしいです。そして、自分のキャリアを数十年先までいったんイメージしてみてください。人生のどの時期に、仕事にどのくらいのパワーをかけたいかまでを考えてみると、未来が少し具体化してきませんか。
それと、就活を進める中で、ついブランドに引かれて一流企業にばかり目が行ってしまうこともあると思います。でも、それは決して本質ではありません。自分の人生設計に相応しい、自分が求める成長を遂げるために必要な“材料”は何か。それを忘れずにいれば、きっと自分らしく働ける場所にたどり着けると思います。
(取材・文/森川直樹、撮影/竹井俊晴)