100点を超える可能性を生むのは、今70点でも挑戦しておくこと
チャンスをもたらしたのは、ハングリーさよりも「好奇心」
「地元の神戸ではお約束なんですけれど、親からは『P&Gだけは受けておけ』なんて言われていましたね。普通の大学生でしたよ。リクルートも受けました。すぐ落ちたけど(笑)」
気鋭の若き経営者としてメディアにも数多く取り上げられてきた佐藤裕介氏は、ギラギラと情熱的なムードも、キレキレのクールなオーラも発散しない。そういったステレオタイプの起業家イメージとは無縁のたたずまいで静かに微笑みながら「普通な自分」について訥々と語る。
「もともとハングリーなタイプではないんです。キャリアプランなんてもちろんなくて、いつも好奇心に突き動かされてきただけ」
学生時代に起業した時もそうだった。純粋に、自分の趣味とインターネットを組み合わせたら何が起こるかという好奇心からECサイトを開設。すると、運営して2年足らずの間に年商数億円にまで成長したのだった。しかし、すぐに佐藤氏の好奇心の矛先は違うものへと向かう。
「飽き性な自覚があるので、飽きさせないように自然と選んでいるんです。この時は、事業の中でGoogleが展開していた検索連動型広告のアドワーズを試してみたら効果絶大で、『すげえな』と単純に感動しました。実際に利用しながら、独学でインターネット広告のことを勉強していきました。そして、知れば知るほど同社が考えた仕組みに夢中になって、じゃあここで働いてみようと」
Googleとしても自社の広告技術を利用した成功事例として佐藤氏の事業を認知していたことから縁がつながり、入社が決まった。「入りたい」と思っただけで入社できてしまったように見えるが、きっかけは佐藤氏の強烈な好奇心からだ。また、Googleに対してはもう一つの期待もあった。それは佐藤氏にとっての「定規」となること。
「起業してずっと自分が一番の中で過ごしてきているので、自分を測る定規がない。世界で一番すごい人たちと今の自分にはどれだけ差があるのか、測ってみたいと思ったんです」
数字では証明できない“生煮え”の価値を問う冒険
その後、佐藤氏は自らの好奇心を満たすべく、さまざまなことを吸収していった。濃密な2年弱の期間を過ごした後、退職という道を選ぶ。
「Googleはエンジニアの技術だけでなく、ビジネスの仕組み作りも素晴らしかった。定量的な情報や数字を根拠に事業を進めることで、個々の人間が持つ違いを超えて着実に成果を出す。とても洗練されていて、合理的なビジネスを経験できました」
一方で自分のビジネス的な嗜好にも改めて気が付いたという。
「僕は極めて定性的なものが好きな人間です。数字やデータでは証明できない“生煮え”状態の不確かな可能性を追い掛けたい、自分だからこそできる仕事を手掛けていたい。そう考えると、Googleを辞めることをもったいないと言う人もいましたが、僕にとっては何でもないことだったんです」
フリーランスとなって1年後、本田謙氏と佐藤氏によって設立されたのがフリークアウトだが、同社には掲げ続けているコーポレートビジョンがある。それは「人に人らしい仕事を」。“生煮えの価値”を追求する姿勢は、このビジョンにも明確に表現されている。
今この時代にこのビジネスで挑戦できることは「幸運」
フリークアウトはRTB(リアルタイムビッティング)という技術をサービス化し、マーケティングの最先端として注目されるDMPやDSP等の領域でいち早く成功。設立から約3年半で、佐藤氏が取締役を務めるもう1社と同時にマザーズ上場を達成した。「20代で2つの会社を上場させた男」という異名で語られるようにもなった。しかし、当人はこうした扱いにあまり興味を持っていない。
「確かに僕らにとって上場はとても大きな一歩でした。でも、それを目標にして仕事をしてきたわけではありません。単純に面白いと感じ、好奇心を抱いた生煮えで誰も証明していない価値を大きく育てていく過程で自然とそこに行き着いた。会社の長期の成長を考え始めたのは正直なところ上場した後。今まさに、という感じです」
上場は企業経営の節目だが、佐藤氏にとっては「四半期ごとに株主をはじめ世の中に約束をしていく立場になった」だけのこと。その責任の重さをポジティブに受け止めて、会社経営を飽きることなく続けていくための着火剤をもらったのだという。
「僕自身、奇跡的な幸運に恵まれて今ここにいると思っているんです。AIや機械学習、大規模データの解析などによって、社会が大きく変容しようというタイミングで、その変わっていくど真ん中のものを強みに事業をしていて、そこで経営をやれている。この風に乗らない手はないでしょ、と」
佐藤氏は続けて「世の中には絶対に拾った方が得なのに、拾われてないものが多くある」と言う。常識や慣習にとらわれていると見過ごしてしまうチャンスを、確実に拾うことができるのも彼が成功してきた理由の一つなのだろう。
将来有望なのは、RPGで薬草を使わない奴
「好奇心」、「幸運」、「風に乗る」。佐藤氏が20代でここまでの成果を出せた要因を振り返るキーワードはどれも他人にはまねできないもののように思える。しかし、佐藤氏が経営者目線でこれから活躍する人間の特徴として挙げた要素は少し違う。
「例えば、RPGゲームで一度クリアした後に、『次は薬草を使わないでクリアする』って勝手に自分に縛りをかけて挑戦するような人には期待しちゃいますね。人間って必ず飽きるじゃないですか。でも、続けた方が絶対に価値があるんですよ。自分が飽きずに続けられる方法を知っている人はいいなと思いますね」
実際、フリークアウトでは入社1年目から佐藤氏とプロジェクトを組むこともあるという。
「ある2年目の女性社員は会社から与えられたミッションは軽く超えられるほど優秀だったんですが、彼女はそこで100点を取って満足しなかった。自ら興味のある分野について調べて僕に提案してきたんです。そこから実際に事業化することになり、今も彼女が担当しています」
多くのベンチャー企業がそうであるように、フリークアウトも「若いうちから挑戦できる環境」であることは間違いない。ただし、フリークアウトで挑戦できることは生まれたてのベンチャーとは規模とスピード感が違う。現在の営業組織の局長は全員新卒入社4年目以内の人材であるという。
「仮にその仕事で70点しか取れなくても、その仕事を25歳で経験できたら30歳になったときには150点取れるかもしれない。若いうちに付けた小さな差分が、銀行の複利計算みたいに加速度的に膨らんでいったら……僕はそういう想像をするのが好きなんです」
20代の間に人が驚くような変転を繰り返しながらも、好奇心の赴くままに挑戦を続けてきた佐藤氏ならではの発想といえる。事実、佐藤氏は150点を獲得した代表選手である。すでに大きな成功を獲得しているフリークアウトが、今なお旺盛なチャレンジを続け、若手へ大胆にチャンスを提供しているのも、皆が150点に到達するためのアプローチなのだ。
現在担っているアカウント・エグゼクティブという職務は、企業が抱えるマーケティング課題の解決についてコンサルティングを行いながら、当社が持つプロダクトの数々をダイレクトセールスしていく仕事です。
僕がフリークアウトに入社した理由は、早くからグローバルで活躍できる人間になりたかったから。インターネット業界の中でも特にアドテクノロジー分野はそれ自体が共通言語なので、言語の垣根を超えて発展し、世界中で活用されています。歴史も浅く、成功事例も限られているこの分野でスキルや知識、経験を培っていけば、僕のような若者でも世界で活躍するチャンスが十分にあると思いました。
実際、入社後はただアドテクノロジーの知識を付けるだけでなく、3年目で局長に昇進したことで、年間数十億円規模の目標数値に責任を負い、10名以上のチームメンバーを束ねるといった他ではできない経験ができていると感じます。
結果を出せば、ストレートに評価してもらえるのがフリークアウト。今の環境を得られたのも、入社2年目で売上1位を達成したのがきっかけで、すぐにその翌年、局長に昇進しました。1年目からビッグクライアントである大手メーカーを担当させ
てもらえたのもそうですが、何か一つクリアするとさらに難易度の高い課題を与えてくれる、そんな環境が最高に刺激的ですね。
【case2】Science Division 小浜 翔太郎さん (京都大学大学院修了/入社3年目)
部署の枠を超えて問題解決に挑む。挑戦がさらなる挑戦の機会を引き寄せる
大学院時代に学んだ機械学習の知識を活かし、広告効果を最大化するのが私のミッションです。入社後まず先輩社員から言われたのが「失敗しても大丈夫。そのために私たちがいるから」という言葉。それを信じて行動してきた結果、機械学習を研究に使うだけでなく、実際にシステムに組み込んで、安定的に運用するノウハウが身に付いてきた実感があります。最近も、機械学習・分析をクラウド上で行える環境を整備するなどして検証効率の大幅改善に貢献しました。今後も新しいシステムやアルゴリズムを提案していきたいですね。
【case3】営業本部 アカウントマネジメント局 岡田梨佐さん (早稲田大学卒業/入社3年目)
新卒社員として初めての海外支社異動。「チャンスを与える文化」を実感
2017年秋から台湾支社に海外赴任します。2年目の秋に、代表の佐藤に直接打診されてから約1年間の準備期間を経て、私自身も自信が付いたタイミングでチャレンジが決まりました。現在は引き継ぎ業務と同時並行で、現地で販売するプロダクトやマーケットのリサーチ、インバウンドマーケティングについて勉強中です。何よりうれしかったのは、3年間ずっとサポートしてくれた上司が「もう言うことなし、行ってこい!」と送り出してくれたこと。海外を目指す後輩たちのロールモデルになれるよう、全力で結果を出してきます。
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