2025/10/31 更新

ビジネスパーソンの転換点を深掘り

キャリアの成長 Before/After

効率や最短ルートの追求だけが「いい仕事」なのか? ビジネスパーソンとしての成長は、試行錯誤を必要とする困難や挑戦を乗り越えた先にあるはずだ。

本特集では、各企業の第一線で活躍する社員のキャリアにおける成長のBefore/Afterを深掘り。彼らが壁を乗り越え、飛躍を遂げたリアルな姿から、効率だけでは語れない仕事の奥深さと、確かな成長イメージを学ぶ。

日本貿易振興機構(JETRO)
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企画部企画課
平本諒太
2012年東京大学経済学部経済学科卒業。同年4月、日本貿易振興機構に入構、企画部海外事務所運営課に配属。14年に静岡事務所に異動し、17年に日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)で日本産水産物の輸出促進に携わる。21年から4年間ニューヨーク事務所に駐在し、25年7月に帰国、現職に就く
入構9年目、ニューヨーク事務所に赴任。対日投資、国際協業連携支援などのイノベーション分野を担当。コロナ禍では、オンラインセミナーに参加し情報収集。その後各地を訪問し、企業・大学・研究機関に人脈を広げる。北米全域担当として『J-BRIDGE』を推進。半導体研究機関との覚書締結、量子技術の交流イベント開催に尽力した
日本の製品・技術をどうアピールするかという自国目線で輸出を促進
政策や社会課題を見据え熱量とロジックをもって日本と海外を橋渡しする
自分の限界や克服すべきことを見極めて
仕事の中で改善を重ね、成長につなげる

北米広域担当として事務所の枠を超えた議論を呼びかけ
日米のエコシステム同士をつなぐアイデアを導き出す

私の転換点は、入構9年目の冬。コロナ禍でのニューヨーク事務所赴任でした。それまで4年間、日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)でアジア向けの日本産水産物輸出促進に従事。現地のニーズを踏まえているつもりでも、どうしても「日本の良さを伝えたい」という思いが先行していました。そんな私が赴任先で任されたのは、対日投資と国際協業連携を支援する『J-BRIDGE』。輸出促進から企業間連携へ、これまでとは全く異なる視点が求められる未知の領域でした。担当エリアは米国北東部から北米全域へ。産業起点での日米連携という重い課題。当時の米国政権が打ち出した半導体産業の振興や気候変動対策強化などの政策への対応、加速するスタートアップ投資。これらの潮流を俯瞰しながら、スピード感を持って施策をかたちにすることが求められました。知識も専門用語も分からない。でも迷っている時間はない。まずは現地の情報の渦に飛び込むことから始めました。

赴任直後からオンラインイベントに積極的に参加。アメリカの企業やスタートアップ、協業を望む日本企業、大学や研究機関との対話を重ね、論点を整理していきます。北米全域を任されてからは各地の日本企業を訪問。お客さまの生の声、温度感、本音を拾い、ネットワークを意識的に強化しました。しかし、一対一のマッチングには限界がある。そこで事務所の枠を超えた議論を仕掛けました。企業、大学、地域研究機関を含むエコシステム同士を結ぶ。この発想の転換が突破口になりました。例えば、シカゴ事務所と連携し、北東部ボストンの地で活躍する日系企業と中西部の米系製造業エコシステム関係者の交流イベントを共催。日米双方から「継続してほしい」という声が上がり、次の協業への芽を育てることができました。半導体分野では、ニューヨーク州の研究機関とJETROの覚書締結を実現。AIや量子技術にも着目し、MITやハーバード大学など最先端の研究機関を繰り返し訪問。小規模な交流会やWebセミナーを積み重ねました。小さな成功体験が次の挑戦を生む。その連鎖を目の当たりにしました。

この経験で痛感したのは、仕事は一人では絶対に成し得ないということ。自分の限界を知ることで、何を他者に頼るべきか、何を克服すべきかが見えてきます。事務所のチーム、他の事務所、東京の本部、そしてお客さま。多くの関係者を動かすには、熱意だけでも、ロジックだけでもダメ。両方がかみ合って初めて人は動き、事が成る。基礎を徹底することが、変化の激しい環境ほど効いてきます。また、米国で出会った日系企業の方々からも大きな刺激を受けました。自社の利益を超えて「日本としてどう世界で戦うか」という高い視座。公的機関の一員として、背筋が伸びる思いでした。海外に出て初めて、日本の良い点も課題も客観的に見えるようになり、異国で支えてくれた家族への感謝も深まりました。

帰国した今は、企画部企画課でJETRO全体の予算管理や戦略策定を支援。現場で得た知見を組織に還流させる役割です。近い将来、再び海外の現場へ。現地パートナーと共に新たな価値を創りたい。日米のエコシステムを結んだ経験を土台に、挑戦の連鎖をこれからも仕掛けていきます。

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