2017/6/30 更新 就職マーケットニュース

大手監査法人が新卒採用を積極展開中! リスクマネジメントという“守りのコンサル”で新たなキャリアの可能性

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就職マーケットニュース
新卒採用市場の最新動向や旬のトピックを紹介。今採用意欲が高まっている業界・職種、社会的注目を集めている新たな採用手法や就職支援サービス、学生の就職動向など、多岐にわたるテーマに迫る。外的環境を理解し、自分らしい就活スタイルの確立に役立てよう。

 大手監査法人各社で新卒採用意欲が高まっている。中でも、PwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)は、2019年度卒採用人数を前年の倍に引き上げる方針だという。

 なぜ今、監査法人が採用に積極的なのか? その背景には、日本のビジネス環境の変化が大きく影響している。就活生にとって、新たなキャリアの選択肢となり得る、監査法人が持つ意外なビジネス領域の広がりを読み解いてみたい。

監査法人が持つ“守りのコンサルティング”というビジネスフィールド

「監査法人の新卒採用対象というと、公認会計士の有資格者または資格取得を目指す人材のみをイメージされがちですが、大きな誤解です」

 そう語るのは、PwCあらたでパートナーを務める岸泰弘氏だ。その真意を汲み取るには、まず『Big4』と呼ばれる四大会計事務所の業務領域を理解する必要がある。
 Big4とは、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)、デロイト トウシュ トーマツ(Deloitte)、アーンスト・アンド・ヤング(EY)、KPMGのこと。会計・監査・税務・コンサルティングなどのサービスを提供する総合プロフェッショナルファームだ。
 本拠地を置く欧米では、監査とコンサルティングはファームの一機能として集約されているが、日本では法令に従ってコンサルティングと監査は別法人として存在している。

「したがって日本においては、PwCあらた有限責任監査法人、PwCコンサルティング合同会社、PwCアドバイザリー合同会社、そしてPwC税理士法人等の複数の法人が存在します。そのため、監査法人は会計監査だけを行っていると思われがちですが、監査はPwCあらたが手掛けるビジネスの一角でしかありません。“守りのコンサルティング”ともいうべきアドバイザリー業務が重要な事業の柱となりつつあります」(岸氏)

 PwCコンサルティングが提供するのは、主に売上構築や事業拡大を目的としたビジネス戦略を策定する、いわば“攻めのコンサルティング”。一方、PwCあらたが仕掛けるのは、業務プロセスやコンプライアンス管理に係る組織体制など、企業のビジネス周辺に潜むリスクを洗い出し、未然に防ぐ“守りのコンサルティング”だ。

「多くの企業で業務のあらゆるプロセスがIT化されています。当然、会計監査を行う上でも、顧客企業が導入している会計システムや、そこにつながる業務システムが正しく活用されているかどうかをレビューする必要がある。こうした監査業務を通じて得たリスクマネジメントの知見を、コンサルティングサービスとして提供しているのです」(岸氏)

“専門性”を極めれば、“汎用性”の高いプロフェッショナルスキルになる

 この“守りのコンサルティング”を展開しているのが、岸氏が率いるシステム・プロセス・アシュアランス部門(以下、SPA)だ。
 企業経営をする上で、利益最大化を実現するためには、「新たな利益を生み出すこと」と「利益を失うリスクを減らすこと」は常にワンセットで考える必要がある。欧米ではすでにこのスタイルが根付いているが、ビジネス環境のグローバル化やITの導入・活用が進んだことを背景に、日本の企業経営も欧米型へシフトしているという。

「大規模システム開発時のコスト・納期・品質の担保、自然災害やテロ攻撃など有事の際のBCP(事業継続計画)立案、情報漏えいやサイバー攻撃を防ぐセキュリティ対策など、IT化に伴い、企業の外部・内部に潜むリスクとその対策は多様化しています。これらのリスクを未然に防ぐため、外部に知見を求める企業が増えており、当法人のSPA部門で請け負う案件も拡大しています」(岸氏)

 例えば、大手金融機関の巨大ITプロジェクトの進捗を第三者としてモニタリングし、遅延リスクを調査する案件。設計済みのBCPをチェックし、有効化するためのアドバイスを提供する案件。企業が抱えるリスク・アセスメントを洗い出した上で、導入済みのサイバーセキュリティー対策が適正かを評価する案件など、SPA部門が取り扱う領域は多岐にわたる。

「日本経済全体は拡大しているとは言いがたいですが、リスクマネジメント分野のマーケットは確実に伸びています。だからこそ今、SPA部門の組織拡大に着手しており、新卒採用にも力を入れているのです」(岸氏)

 SPA部門では、これまで即戦力重視で中途採用者を主軸に組織作りを進めてきた。経理、営業など、企業経営のあらゆる業務プロセスに習熟した人、ITに通じたエンジニア出身者など、さまざまな専門領域を持つ人材が集う組織へと成長した今、中長期的な発展を目指し、新卒入社者の受け入れを強化している。

「一昨年から実施しているインターンでは、架空の企業の新規ビジネスに対するリスクを特定し、その対応策を提案するプログラムを提供しています。この企画が非常に好評で、参加をきっかけにリスクマネジメントの仕事の面白さに気付き、志望してくれる学生の方も増えつつあります。業務プロセスの深い理解とIT知識という2軸の専門性を磨くことで、ビジネスを俯瞰し、全体把握できる汎用性の高いスキルを得ることができるのが、この仕事の醍醐味だと思っています」(岸氏)

企業の“信頼”を保証し、より良い社会を創ることが監査法人の使命

 監査法人が持つ特性を、「インディペンデントであること」と岸氏は語る。
 どこにも依存しない、独立した存在であるからこそ、企業が有するあらゆるビジネスプロセスを第三者として評価・保証し、結果、企業に“社会的信頼”という大きな価値を提供することができる。

「いまや社会的信頼なくして企業のビジネス成功はあり得ません。企業の経営基盤を支え、より良い社会を創るために、ITガバナンスとビジネスプロセスの知見をベースに、できることはすべて提供していくのがPwCあらたの姿勢です」(岸氏)

 監査法人は今、監査という枠を超え、さまざまなチャレンジを仕掛けるプロフェッショナル集団へと進化している。
 “守りのコンサルティング”の重要性がますます問われていくこれからの時代、社会貢献性の高い仕事を志望する学生たちにとって、新たなキャリアを築ける、最高にエキサイティングなフィールドがまた一つ登場したといえそうだ。

PwCあらた有限責任監査法人
システム・プロセス・アシュアランス部長
パートナー
岸 泰弘氏
ロンドン大学(LSE)情報システム管理修士課程終了。金融機関向けのシステム監査および情報セキュリティ、システムリスク管理、ITガバナンスに関するコンサルティングを多数経験した後、製造業やサービス業に対象分野を拡大。ITを重要インフラとする多くの産業を担当する。現在は、業務プロセス・システム・組織・データ分析の領域において、監査業務を通じて得た経験とノウハウから、経営課題解決のためのアドバイザリーサービスを提供するシステム・プロセス・アシュアランス部を統括。同部門のビジネスをリードすると共に新卒採用業務にも携わっている

(取材・文/浦野孝嗣 福井千尋[編集部]、撮影/大島哲二)

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