2021/6/14 更新 デロイト トーマツ コンサルティング

デロイト トーマツ グループのパートナー3名が語る、コンサルティングビジネスの最前線

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アナリティクスを活用したコンサルティングサービスを業界に先駆けて導入したデロイト トーマツ グループ。グループ横断の取り組みである「デロイトアナリティクス(Deloitte Analytics)」によって、クライアントのDXやイノベーション創出を推進している。 企業経営におけるデジタル活用が当たり前になった今、顧客のニーズやコンサルタントが果たすべき役割はどのように変化したのか。同グループのパートナー3人が、コンサルティングビジネスの最前線について語った。

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー パートナー 前田善宏氏【写真左】

M&A・再編での事業性調査、シミュレーション、コマーシャルデューデリジェンス、オペレーショナルデューデリジェンス、持株会社化、PMI(企業統合・分割支援)などの案件に携わる

有限責任監査法人トーマツ パートナー 神津友武氏【写真中央】

デロイト トーマツ グループが提供する監査およびコンサルティングサービスへのアナリティクス活用を推進するとともに、データ分析基礎技術開発を行う研究開発部門を統括

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 パートナー 大平匡洋氏【写真右】

戦略策定から業務改善、IT導入に至るまで幅広いコンサルティングサービスを20年以上にわたり提供。現在は同社のデータアナリティクス領域をリードしている

グループ横断だから、顧客にEnd to Endでサービスを提供できる

−−−−まずは皆さんの役割とミッションについて教えてください。

大平:デロイト トーマツ コンサルティング(以下、DTC)は、企業の成長を支援するためのコンサルティングサービスを提供しています。私はパートナーとして、グループ内のデータアナリティクスの領域をリードしています。

神津:有限責任監査法人トーマツは、監査・保証業務とリスクアドバイザリーを手掛ける組織です。私はデロイトアナリティクスの事業ユニット長を務めると同時に、データ分析の基礎技術開発を手掛ける研究開発部門も率いています。

前田:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー(以下、DTFA)は、企業のM&Aや再編、危機管理などに関するソリューションを提供しています。
私は企画担当役員であり、グループ全体のイノベーションリーダーを担う立場でもあります。

また、ベンチャー支援や大手企業向けのイノベーションコンサルティングを行うデロイト トーマツ ベンチャーサポートの代表取締役も兼任しています。


−−−− デロイトアナリティクスはグループ横断の取り組みだと伺っています。クライアントにどのようなサービスを提供しているのでしょうか。

神津:デロイトアナリティクスの最大の特徴は、顧客にEnd to Endでサービスを提供していることです。

現在はあらゆる企業がDX(デジタル・トランスフォーメーション)に取り組んでいますが、単にデータ分析をするだけでは変革は実行できません。デジタル化を推進するための戦略立案や組織作りに始まり、市場環境やニーズなどの実態を分析し、プランを現場で実行可能なオペレーションに落とし込まなければいけません。

われわれはグループ全体で連携し、3社がそれぞれの強みや知見を生かしながら、DXのプロセスを最初から最後までワンストップで支援しています。

大平:通常は3社それぞれがクライアントに対してサービスを提供していますが、その中でデロイトアナリティクスとして対応すべき案件が発生したら、必要に応じて各社に所属するアナリティクスの専門家とコラボレーションします。

定期的にミーティングを開き、「この案件は一緒にやった方がお客さまにより貢献できるのではないか」といった情報を交換しながら、グループ内にどのようなビジネスチャンスがあるかを各社で共有しています。

コロナショックが企業のIT投資を加速させた

−−−−具体的には、企業からどのような支援を求められることが多いのですか。

大平:DTCに寄せられる案件で最近増えている領域は二つあります。一つは、データプラットフォームに関する案件です。これは例えるなら、データを貯めておく箱のようなもの。それを新しい技術を使ってクラウド上に構築したいという引き合いが増えています。

大平:もう一つは、AIです。単純なデータ分析ではなく、最新のAI技術を用いてより高度な施策を実行したいというご相談が多くなっています。

神津:先ほどDXのプロセスを紹介しましたが、日本企業は今ようやく実証段階の分析(PoC)が終わり、次は自分たちでオペレーションを実行しながらアナリティクスの効果を実際のビジネスに役立てていくフェーズに来ています。ですからわれわれに対しても、オペレーションの運用支援を求めるニーズが高まっています。

特にAI技術については、ひと昔前のように一度システムを作れば終わりではなく、メンテナンスを継続しないと精度が下がってしまうので、その点についてのサポートも必要です。

加えてAI技術は決して万能ではなく、運用においては倫理やプライバシーに関する問題が生じるリスクも想定しなければいけない。こうしたリスク対応への支援を求められるケースも増えています。

前田:DTFAが提供するサービスの一つに、M&Aアドバイザリーがあります。企業が合併や買収を行うと、複数の会社がバラバラに持っていたデータを統合しなければいけないので、その支援を求められるケースは多いですね。

また最近では、大手企業がAIやアナリティクスの技術を持つベンチャーに出資や投資をして、新たな価値の創出やイノベーションへの展望を見出そうとする動きが強まっています。

例えば保険会社が「契約の継続率を高めたい」と考えているケースなら、まずは顧客調査を実施して保険会社に対するユーザーのロイヤリティや満足度をデータ分析し、現状で何が足りないのかを把握した上で、どのような技術やノウハウを持つベンチャーと提携すればそれを解決できるのかをご提案します。

M&Aは経営戦略の一部なので、こうした案件ではDTCや監査法人のメンバーとも連携しながら進めていくことが多くなります。


−−−−コロナ禍によって世界中が大きな環境変化に直面していますが、皆さんのビジネスやクライアント企業の経営にはどのような影響があったのでしょうか。

大平:実を言うと、現状ではほとんど影響がありません。もちろんコロナ禍が始まった直後は企業の間でも混乱がありましたが、われわれのお客さまは思った以上に回復が早く、デロイト トーマツ グループ全体の業績も好調です。

神津:今回のコロナショックを機に、どの企業も「ITに投資しなければ生き残れない」という意識を強めています。ですから企業のDXに対する意欲や真剣度はむしろ高まっている印象ですね。

前田:対面接客を伴うBtoCビジネスは現在でも大きな打撃を受けていますが、一方でテックカンパニーやデジタルコンテンツを扱うエンターテイメント企業などは、人との接触が減った環境下だからこそ成長が加速している側面もあります。

例えばリアルなコンサートは開けなくても、人気歌手のライブ映像をデジタルで有料配信すれば、コンサート会場に入れる人数の何倍もの視聴者が見てくれるので、一度に大きな利益を稼げる。しかも視聴者のデータも取得できるので、それをもとにさらなるサービスを追加して稼ぐこともできます。

コロナ禍は不幸な出来事ですが、社会全体でデジタル化を推進させる契機になったのも事実です。こんな時だからこそ、アナリティクスの力を使ってDXの推進に寄与したいと考えています。

組織間の壁がないから各社が連携して高い価値を提供できる

−−−−最近は他のコンサルティングファームもアナリティクスを用いたサービスを提供しています。デロイト トーマツ グループだからこそ提供できる価値や強みはどのようなものですか。

大平:先ほども話に出たように、コンサルティング、監査法人、ファイナンシャルアドバイザリーと3領域のプロフェッショナルが連携できるのが何よりの強みです。

各社にデータサイエンティストが多数在籍しており、監査法人なら監査に関するデータ、DTFAならM&Aに関するデータなど、デロイトアナリティクスの中でもさまざまな領域に精通した専門家が揃っています。

さらに、そのデータをどう活用すべきかの戦略や組織作りの絵を描けるコンサルタントもいて、まさにグループ全体が横串でお客さまにサービスを提供している。これは他にはない特徴です。

神津:さらには弁護士や会計士など、企業をサポートできるプロフェッショナル人材が揃っているので、提供できるサービスの幅が非常に広い。われわれは会計監査も手掛けているので、企業から信頼が厚く、お客さまを継続的にサポートできるのも強みです。

前田:私は同業他社で働いた経験があるのでよく分かるのですが、デロイト トーマツ グループほど組織間の壁が薄い会社はめったにないですよ。薄いというより、壁がない。

前田:前職でも私はファイナンシャルアドバイザリー部門に所属していたのですが、コンサルティング部門の人と話す機会なんてほとんどありませんでした。だからこうして異なるファンクションの人間が一堂に会して、しかもこんなにフランクに喋り合うなんて、前の会社では考えられない(笑)

自分がどのファンクションに属していても、グループに所属する約1万5000人のメンバーといつでも自由にコミュニケーションが取れる。そんなカルチャーが根付いている会社はなかなかありません。


−−−−デロイトアナリティクスのサービスを始めたことで、クライアントに提供できる価値やコンサルタントの働き方にはどのような変化がありましたか。

神津:そもそもコンサルティングのスタイル自体が、以前とは変化しています。従来のコンサルタントは一人一人が自分の力でサービスを売っていく、いわば個人商店のような働き方が主流でした。

それに対し、現在のコンサルティングは、デジタルの力を活用したアセットビジネス(※)に移行しています。
※事業者自身が施設や情報システムなどの資産を保有、運用して業務を行う業態

これは個人が持つ情報やノウハウを単独で提供するのではなく、組織全体が持つコンサルタントの集合知をデジタルツール化して提供するビジネススタイルのこと。お客さまはそのツールを使えば自分でさまざまな判断や意思決定ができるので、会社として自走することが可能になります。

グループ内にある知見を集めてアセット化するには、組織同士の連携が不可欠です。その意味でも、グループ横断の体制ができたことは大きな意味があります。

大平:われわれは以前から必要に応じてファンクション同士が連携してきましたが、会社がイニシアティブを取ってグループ横断の取り組みをすると決めたことで、よりコラボレーションしやすくなったと感じます。実際にDTCも、DTFAや監査法人と一緒に仕事をする機会が圧倒的に増えました。

前田:今では人材採用もデロイトアナリティクスとして一括で行っています。採用されたメンバーは、DTCやDTFA、監査法人をローテーションしながら、多様な領域の案件にアサインされます。共通のリソースが各社間を行き来することで、さらに連携が取りやすくなりました。

データ分析やテクノロジーはあくまで手段である

−−−−以前と今とではコンサルティングサービスのスタイルが変化しているというお話がありました。これからの時代にコンサルタントとして活躍するには、どのような能力やマインドが求められますか。

大平:コンサルティングで最も重要なのは、データ分析の結果に基づいて、どのような戦略を立てるか。もちろん新しい技術を学んで分析の精度を上げることは必要ですが、それはあくまで手段です。コンサルタントが最終的に目指すべきはお客さまにとって最適な戦略を立てること。それは昔も今も変わっていません。

神津:私も同じ意見です。コンサルタントのミッションは経営者の意思決定を支援することであり、テクノロジーはその手段という位置付けです。

デロイト トーマツ グループが掲げるビジョンに“The Age of With”(人とAIが協調する社会)があります。前述の通りAIは万能ではないので、人間とテクノロジーが協力関係を築けるように誰かが手助けしなければいけない。

神津:よってコンサルタントは、AIが出した分析結果が本当に正しいのかを見極め、経営者に方向性を提示することが重要な役割になります。

その一方で、AI技術によって人間の能力が磨かれたり、逆に人間がAIの精度を高めたりと、両者が互いを高め合う関係性も生まれています。例えば将棋の世界は、まさにそうですよね。

これからのコンサルタントは、AIとのインタラクションによって新しい知識やスキルをキャッチアップしながら、自分を常に高めていこうとする姿勢が必要になるでしょう。

前田:私はグループのイノベーション推進を担当していますが、革新を起こす人材になるには、知的好奇心が非常に重要だと感じています。

この30〜40年を振り返ると、人々の生活様式はほとんど変わっていません。変化といえば携帯電話が登場したくらいで、パソコンのキーボード一つとっても、UIはまったく変わっていない。

ただしこれからは、その世界観がガラリと変わります。なぜなら、デジタル技術がインダストリーやセクター間の隙間を埋めるからです。

これまで車は自動車メーカーが作るのが当たり前でしたが、今はGAFAを筆頭とするデジタルカンパニーが自動運転車の開発に乗り出している。今後はますます業界同士の融合が進み、まったく新しいビジネスやサービスが生まれていくはずです。

つまり、これまで人々が発想しなかったところにこそイノベーションの種がある。それを見つけるには、幅広い領域に対して知的好奇心を持ち、頭を柔らかくして発想する力が求められます。そして発想したことを証明するために、データアナリティクスを活用する。そんなイノベーティブマインドを持つことがコンサルタントには必要です。

社会が激変するタイミングだからこそ、若い世代が力を発揮できる

−−−−これからデロイト トーマツ グループに入社する若手には、どのようなチャンスがありますか。

大平:デロイトアナリティクスでは採用を一本化していますから、コンサルティングの仕事もできるし、リスクアドバイザリーやM&Aの仕事もできる。早い段階からこれだけ幅広い経験を積めることは、若手にとって大きなチャンスです。

また「DX+ビジネス」の経験やスキルを身に付けたい若手にとって、デロイト トーマツ グループは非常に良い環境です。単にITシステムを導入するだけではなく、デジタルの力を最大限に活用しつつ、ビジネスの視点に立ってコンサルティングサービスを提供できるのがわれわれの強み。若手が日々の仕事の中で学べることは多いはずです。

神津:若いうちに幅広い仕事を経験することで、早く成長できる。これは大きなメリットです。またデロイト トーマツ グループは社会課題の解決に積極的に取り組んでいるので、仕事を通じて社会貢献できる機会も数多くあります。自分の成長とやりがいの両方を手にしたい人にとっては、チャンスの多い職場と言えるでしょう。

前田:先ほど話したように今は時代の変わり目であり、特に今後5年間は、この数十年で社会が最も劇的に変わるタイミングであることは間違いありません。その時、デジタルの力で社会を変革できるのは若い人たちです。

デジタルネイティブとして上の世代よりもずっと多くの知識やスキルをすでに身に付けているし、頭も柔らかい。イノベーティブな発想もどんどん生み出せるでしょう。

そのアイデアを社会に実装し、日本の新しいスタンダードにしていく醍醐味をぜひ楽しんでいただきたい。これから入社する皆さんと一緒に社会を変革していけることを楽しみにしています。

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